九州ラーメンは小ぶりでレトロなどんぶりで食べてこそだと思うのです。
目次
・ラーメンは雰囲気…と言いきってしまう
・老舗ラーメン店のどんぶりに嬉しくなる
・手作りでは到達できない領域がある?
・高温で発酵は可能か?
・豚骨臭…さらなる高みへ
ラーメンは雰囲気…と言いきってしまう
いや、のっけから偏見に満ちた発言で失礼、ラーメンの味を左右するのは雰囲気だと思うんですよね。
私にとってラーメンは郷愁の食べ物、懐かしさを思い起こさせる店の雰囲気が味を増幅させると信じています。ちょっと脂ぎった年季の入った店内、長年使い続けられたコショーの容器、
模様がかすれて、見るからに年季の入ったどんぶり、これが小ぶりだとなお良し。豪華に見せたいのか大層などんぶりに、ちんまり麺とスープが収まっている今時のラーメンは苦手ですね。偏見ついでに言わせて頂けば、紹介記事に腕組みして写っている店主が経営しているラーメン店も行きたくない。
老舗ラーメン店のどんぶりに嬉しくなる
それにしても昔ながらの、ノスタルジックな雰囲気のラーメン店は少なくなりましたね‥‥こちらは27年前に発刊された郷土佐賀のラーメン本なんですけど、現在も営業している店は半分ぐらいになったんではないですか?なんとも寂しい限りです。
その大半が小ぶりのどんぶりにラーメンが並々と盛られている……この本に掲載されていて、今でも営業していると分かった店には、勇んで出かけたりするわけですが、その中の一番小ぶりで印象的などんぶりだったのがこの「大臣閣」
模様に店名が入れてあるというカスタマイズがなされていましたが、私が所有している(実家にあったのを頂戴してきた小ぶりなどんぶり)のとおそらく同じもの。
ウチにあるどんぶりは割れて(経年劣化だったのか、寒い冬の時期に熱いラーメンを鍋から移し替えた瞬間、パキッと音がして割れたこともある)最後の一枚になってしまっているのですが、君らは今だ現役なんだね?と、おもわず嬉しくなってしまいましたよ。
手作りでは到達できない領域がある?
DIY好き食べるのが大好きな私は、当然ラーメンも一から作った事があります。
見た目は真似する事が出来ても真似出来ない領域が…それは「風味」
佐賀ラーメンに限らず九州の豚骨ラーメンには独特の風味があります。人によっては耐えがたいと言われる「豚骨臭」例えるなら長い間体を洗ってもらってない犬が、雨に濡れた時の臭いとでも例えられるでしょうか?九州人にとっては、なんとも郷愁を誘う故郷の風味なんですが、他の地域では嫌われたりします。
本場の味をうたっていた九州ラーメン屋が関東圏で出店したものの、その店から漂う豚骨臭に近隣住民から抗議を受け、閉店に追い込まれたこともあるくらいです。
ところがこの豚骨臭、出そうと思ってもなかなか出せないのですね。何時間も煮込んで、骨の髄も溶け出すぐらいになっても、あの独特の臭いは再現できないんですよ…いや再現できた事があるにはありました。
高温で発酵は可能か?
納豆や熱せられた酢やナムプラーに、豚骨臭に似たものを嗅ぎ取ったんです。その時に思いました、あの豚骨スープの臭い・舌にまとわりつくような旨味…これは「発酵」なのではないか?と。
私の知る発酵…というか発酵菌は、高温では生きられないもの。あのグラグラ炊かれるスープ鍋の中で、発酵が果たしておこなわれるものなのか?発酵菌は死滅するのではないか?とそんな疑問を抱えながらも、スープを常温のまま放置してみたのです。
戦後ラーメンが大衆食として定着しつつある頃、とあるラーメン屋が豚骨スープを放置し、発酵による独特の臭いが発生してしまったものの「ありゃりゃ、スープから不思議な臭いのすると!よかよか、そぎゃん細かこつ誰も気にせんばい」九州人の大らかさからあの匂いが誕生、九州ラーメンの起源はおそらくこんなものじゃなかったかと想像しつつ(笑)
そしたら一度だけ例の豚骨臭・発酵臭が生まれたのです!感動しましたね。しかしその放置時間や鍋の温度が絶妙に発酵条件と重なっていたと思われ、それっきり成功はしませんでした。
ラーメン店は「呼び戻し」という、熟成したスープに水と豚骨を加えていく手法で炊くと聞いています、その積み重なった時間が発酵を促すのではないかと…素人が思い立っていきなり作っても、偶然が重ならない限り、あの風味は出来ないわけだと考えます。
豚骨臭…さらなる高みへ
ところで最近、その豚骨臭を超える風味が気になっています。今は営業されているのか分かりませんが、数年前に行った佐賀の老舗ラーメン店…
そこの御主人が語り好きな方で「ウチのラーメンの味を伝授してもらいたいと、博多のラーメン屋が100万円持参してきた、けれど突っぱねた」とか「ミシュランガイドから掲載したいという申し出があったんだけど、忙しくなるのが嫌だから断った」と語っておられました(本当か?)その店を思い出させる風味。
高度経済成長期、北九州にあった大手金属メーカーが千葉に移転する際、九州から転勤していった従業員とその家族のためにいっしょに移転し、今でも千葉の君津で営業している九州ラーメン店があります。そこと似た風味なんですが、一緒に行った知人によると「蚕の繭を煮ている匂い」に例えていました。
贔屓のラーメン店も最近その風味に近づいてきているように感じました。九州の老舗店は年季を重ねると豚骨臭が昇華するのかな?……先述のように豚骨臭は何とか再現できると可能性があるとしても、この昇華された九州ラーメン風味にたどり着くのは絶対無理!などと感じている今日この頃なのでした。
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